冷たい風吹く3



2台の車は夜中の道を市街地まで一気に走っていく。
どこまで行くのかと慎吾が訝っていると、
ふいに前を行く御木の車が河川敷の駐車場にハザードを出して止まった。

肌寒く閑散とした河川敷に、1台のワンボックスが止まっている。
御木がアゴをしゃくって入るように促した。
その中で話をしようということか。

「何なんだよ?」
慎吾は促されるままに乗り込み、不機嫌を装って言った。
「つーかお前ぇらすげーよなぁ…。まあコレ聞けよ」
御木が一本のカセットテープを慎吾の目の前にチラつかせる。
見覚えのある運転席に座った男と目顔で語り合い、
男の手でカセットがプレーヤーに差し込まれた。


『あっ…たけ…しっ…んんっ』
『くっイイぜ…慎吾…』
『ひ…ぁあ…すごっ…あっ…もっとぉ…』


断続的に上がる嬌声と卑猥に濡れた音。荒い息づかい。
大音量で車内に流れるその声は、紛れも無く自分と中里のものだった。

「なっ…。止めろ…。止めろつってんだよ!」
慎吾は叫んだ。
聞きたくなかった。

鼻にかかった甘ったるい声で中里を誘う、自分の声。掠れた中里の声。
こんな時にまで、中里との情事を思い出し、
ツキッとした痺れが慎吾の下半身を襲う。

「どうした?聞いたらまた感じちまったか?」
ニヤニヤと笑いあう2人の男。
「それで何なんだよ。目的は」
慎吾はそう言いながら、薄々事情は飲み込めていた。
金を強請りたいなら、自分ではなく中里の方にそれを聞かせるだろう。
それを自分に聞かせる意味と言えば、1つしか思い浮かばない。

ヤバイ…
慎吾は直感的にそう感じていた。
ドアがロックされていないことは、確認してある。
逃げるなら、今だ…。

ドアをこじ開け、夢中で外に飛び出した。
愛車の前には回りこんできた運転席の男がいる。
慎吾はやみくもに駐車場から出て河川敷へと走った。

ハァハァ…
普段ロクな運動をしていない身体は悲鳴を上げ、息が乱れる。
初冬の冷たい空気が肺を刺した。
マズイ…
思わず人のいない方へと走っている自分に気付く。
この先は川だ。
道路の方へ逃げれば良かったものを…。

ガクンッと視界が揺れる。
後ろからタックルされ、慎吾は河原の石の上に倒れ込んだ。

そのまま馬乗りになった御木が、慎吾の頬をしたたかに殴りつける。
鈍い衝撃。
一瞬目が眩む。

「へへ…逃げんなよ。つーかもう逃げられネェよ」
御木と男は決して走ったからだけでは無い、荒い息を吐き、
慎吾の服を剥ぎ取っていった。
慣れた手つき。こんなことはしょっちゅうやっているのか。
丸くそろった河原の石が慎吾の肌に触れる。
そのヒヤリと冷たい感触に身が竦んだ。
「何のマネだよ!?」
キツい口調で言いながら、慎吾には何が起きようとしているのか、
わかりすぎるくらいにわかっていた。
だがだからと言ってこのまま受け入れるなど、冗談ではない。

イヤだ…。イヤだ、イヤだ。
こんな奴らに…。
押さえつけられた手首に石が食い込み、痛みに、恐怖と、
それを上回る屈辱に目の奥が赤く染まるような錯覚を覚えた。
自分の肌の上を這いまわる男たちの手。
中里の触れた自分の肌を、男たちが貪るように撫で回す。
思わずゾワリと全身の毛が逆立つような寒気を感じた。

「わかってんだろぉ?まぁ泣いてお願いするっつーんなら許してやってもいいぜ?」
ニヤニヤと笑う口元とは裏腹に、御木のその目には獣じみた興奮が宿っている。

見え透いた嘘を…。
ここで自分が何を言おうと、止めるヤツらか…。

「誰が、んなことするかよ!?離せッ!くそヤロウ!」
組み伏せ、自分を見下ろす御木の顔に唾を吐きかけた。

「コイツ…。自分の立場わかってんのか?
い〜んだぜ?テープばら撒いてもよ。
リーダーさんとNO.2の庄司慎吾くんはおホモ達ですってな」
御木は吐きかけられたものを拭いながら、
下顎を潰さんばかりの勢いで掴み、口をこじ開けた。
脱がされたばかりの下着が、乱暴にグイグイと押し込まれる。

「んん…」
寒さに硬くとがった乳首を、生暖かい御木の下がねろりと舐め上げる。
その感触に、慎吾は小さく曇った声を漏らした。
押さえようとしても、慣れた身体は簡単に快楽を拾い上げていく。

「へっ随分な淫乱じゃねぇか…」
御木が嘲るように言う。
すでに硬くそのカタチを変え始めた慎吾のモノに、男の手が触れる。
「んっ…くぅ…」
性急に扱き上げられ、慎吾のモノは分泌液を零し、男の手が濡れて行く。
くちくちと濡れた音を立て始めた。
充分に滑りを帯び、後ろに這わされた指が、ぬるりと蕾に押し入ってくる。
柔らかな内部の感触を味わうように、執拗にかき回す指の動きが、慎吾の抵抗を封じていった。
身体中が燃えるように熱く、快感を拾うために力が入っているのに、
その腕は抵抗することを放棄したかのように、弛緩していく。
慎吾は睨みつけていた目を、そっと静かに伏せた。

バレるのが怖い?
今さらだ…。
自分が男とヤってることなんて、知ってるヤツはとっくに知ってる。
『庄司慎吾は淫売ヤローだ』なんて、陰口叩いてるヤツだっているのもわかってる。
では中里に傷がつくから…?
いや…。そうじゃない。そんなキレイなモンじゃない。
自分は…。
ただ中里捨てられるのが怖いのだ。
バレそうになるのなら、中里は間違いなく自分との関係を清算しようとするだろう。
それが怖いのだ。

大人しくなった慎吾に安心したのか、口に含まされた布が取り除かれる。
布は重さを含み、ツゥーと糸を引くように唾液が垂れた。

「いつぞやの礼だ。存分に味わいな。気持ちイイんだろ?
なぁ?淫乱慎吾ちゃん」
僅かに揺れ始めた慎吾の腰を、御木が揶揄するように声をかける。
いくらやってもまったく歯が立たなかった慎吾を、辱めることに、
陶酔を感じているのだろう。
その顔には残忍な喜びが滲み出ていた。

だが、その居丈高な態度をへし折るように、
フンと鼻を鳴らして、慎吾は笑った。
「お前ぇら馬鹿か?人を強請っておいてそりゃーねぇだろう?
カネの替わりに料金ナシでヤラせてやるっつってんだよ。こいよ」
ともすれば焦点がぶれそうになるのを、必死で堪え、
わざと挑発的な言葉を吐いて、慎吾は男たちを煽る。

そう。自分は一方的にレイプされるのではない…。
これは合意の上での取引だ。
そう思うことで、自分のちっぽけなプライドは砕け散らずに済むかもしれない。

どっちにしてもホメられたことじゃねぇけどよ…。
慎吾は思った。

嫌だ。と思うのはやめにした。
キレイな身体というわけでなし。
昔から遊ぶ金に困ると、この身を売って凌いできた。
それに3Pだって初めてじゃない。

どうせ汚れきってんだ…。
むしろヤツらが毅を強請ろうと思わなかっただけでも、良かったじゃねぇか。

中里との関係。守りたいものは、ただそれだけ。
それだけ守れれば、他はどうでもいい。
自分の身体を味わった後、男たちが中里に強請りをかけないとは、言い切れない。
テープを撒いたところで、この男達が得るものなどないのだから。
でも願わくば、男たちが自分の身体に満足してくれればいい。
またもう1度…と思ってくれればいい。

そうすれば、泥沼に落ちるのは…この男達、諸共。



「チッ…。クソ面白くねぇ」
慎吾の口元の片方だけをキュッと上げるような笑いに、
御木が顔色を変える。
「だったらおかしくなるまでヤッテやるよ。覚悟しろよ…。」
男の声が低くなった。

男が慎吾の腰を痛いほどに掴み、己のモノを慎吾に深く沈める。
ぐちゅっぐちゅっと御木が動かすたびに、濡れた音が辺りに響いた。
「…んっ…うぅ…」
口に含まされた御木のモノに、声を上げることも出来ずに、慎吾は喘いだ。
後ろから与えられる快感に耐え、
唾液にまみれたそれを舌先でくるむ様にして、絞り上げ、チロチロと先端に舌を這わす。
口の端から含みきれない唾液が、タラタラと喉を伝って河原の石を濡らしていく。
興奮し、慎吾の頭を掴み喉の奥に突き込むように腰を振り始める。
その度に押さえ切れない吐き気がこみ上げる。

単純な挑発に乗りやがって…。馬鹿が…。
慎吾の内心に気付くこともなく、男達は興奮に任せ身を乗り出してきた。
その男達とこんな馬鹿げた茶番を演じ、嬌声を上げている自分を、
慎吾は心の内で男達をせせら笑った。

「うっ…」
御木が小さくうめき慎吾の口から、モノを引き抜いた。
瞬間にあふれ出たものが、勢いよく慎吾の顔に浴びせられる。
生温かい粘り気のある液体が、顔中をトロリと流れ落ちた。

「このクソ生意気な顔にかけてやれるとはな」
御木は満足したように、息を吐き出し、言った。
「痛っ…」
拭おうとした手を、足で踏みしめられ、慎吾は痛みに小さく声を上げた。
「拭いてんじゃねぇよ…」
言い捨て、御木は一休みするつもりなのか、煙草に火をつけ、
少し離れたところで、自分の痴態をじっと眺めていた。

「はぁっ…んんっ…あっ…」
視線を感じながら、慎吾は固く目を瞑り、快楽に没頭した。
目を閉じてしまえば、相手が誰かなんて関係ない。
ただ気持ちイイだけ…。
何もかも考えたくはなかった。
思う存分に声を上げ、ただ快楽を追うのだ。
どんなに声を上げたところで、河の音がそれを消してくれる。

でも…。
なぜかさっきからどこかが痛くて堪らない。
ふと開けた目の前に広がる対岸の灯りが滲むのは、どうしてなのか。
先程ぶちまけられた液体か、それとも…。



「おい。また連絡すっからよ…」
そう言って欲望の限りに貪った男達は、満足げに車へと帰っていった。


慎吾は2人を何度も受け入れ、弛緩した身体で、ホッと深く息をついた。
男たちの放った物が乾き始め、身体中がベタベタとする不快感に、眉をひそめる。
穿たれたソコは傷つきもせず、ただ広げられた違和感だけが残っていた。
髪の中まで土が入り込み、身を起こすとパラパラと肩の上に落ちてくる。


毅に会いてぇ…。
傍らに脱ぎ捨てられ、クシャクシャに丸まった服を身につけながら、
知らず口を突いて出た掠れた自分の声を、慎吾は乾いた笑いで一蹴した。
「痛って…」
石の上に押さえつけられた膝と背中が、今頃になってズキズキと痛んだ。
会ってどうするつもりなのかなんて、わからない。
こんな、いかにも強姦れましたなんて格好で、会いに行ったところで、
優しい慰めなど、かけてくれるはずもないのに。
自分たちは恋人なんかじゃない。
わかっているはずなのに、そんなことを期待する自分がつくづく愚かしく思えた。


慎吾は動きの悪い身体を引きずるようにして自宅へと戻った。
そっと足音を忍ばせ、風呂場に向かう。
熱いシャワーを浴び、出てきた所に携帯のメールが入っていた。
一瞬何かを期待して、慌てて取り上げ、その手が止まる。

御木からだった。一方的に決められた時間と場所。
これからヤツらが飽きるまで、この茶番のような関係は続くのだろうか。




4へ続く



逃げるなつきを見て、慎吾ちゃんVerを書きたくなる私ってやっぱ異常?(笑)
そして清純派(笑)の慎吾がお好きな方すみません〜。

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