愛のカタチ2 ネコ耳編





4月。
この時期、毎年恒例の宴会というのは、どこの世界にも存在するだろう。
花見もあれば、新人の歓迎…
俺がそれを手に入れたのは、世間のご多分に漏れず行われた、
会社での歓迎会でのコト。
ビンゴ大会の賞品で貰った袋の中身を、見た瞬間の驚きと言ったら…。

『アナタの子猫ちゃんセット』

…とか何とか派手なピンクの文字で書かれたそれは、
「男のロマン・ネコ耳カチューシャ」なるものと、シッポの付いたバイブ。
お揃いのファーの付いた手錠。それに怪しげな錠剤。

これを慎吾に……!?
慎吾に…!慎吾に…!!慎吾に…!!!

そう思っただけで鼻血噴出さんばかりに興奮している俺は、一体……。
これでは、はっきり言って、変態さん以外の何者でもないじゃないか…。

いけない、いけない。
俺は漢・中里毅26歳。現役サラリーマン。かに座A型。趣味はドライブ(多少語弊有り)。
愛してるものRと慎吾…。慎吾…しんご…。

慎吾が…。ネコ耳慎吾が…。

いや違う…そうじゃない。

自分を戒めては見たものの、湧き上がってくる欲求を押さえることなど、
出来るわけもなかった。
こんな公衆の面前で、下半身の変化を晒すわけにもいかない。
「気分がすぐれないので…」と上司に詫びを入れ、俺はそそくさと帰り支度を始めた。

「ただいま。慎吾」
いるハズの慎吾の返事がない。
帰りの遅い俺を待ちくたびれたのか、慎吾はテレビを付けたまま、
リビングの床に寝転がって転寝をしていた。

瞳のキツイ印象に隠れ、いつもは目立たないが、実は意外と長い睫毛。
高くツンと尖った鼻先に落ちかかる、茶色い髪。
そして何より、しどけなく半開きになった、薄い唇。

その可愛らしい寝顔に、帰る道すがら、ようやく酔いを冷まし、取り戻した、
なけなしの理性など、どこかへ吹っ飛びそうになる。

「んっ…たけ…し…?」
そっと目蓋にキスを落とすと、目を覚ました慎吾が、まだ半分寝ぼけたような顔で、
俺を見る。
そのいつもより幼い姿に、俺の理性はついに弾けとんだらしい。
カチリ…。俺のどこかでスイッチの入る音がした。

ガサガサと袋を漁り、白い錠剤のカプセルを取り出して、口に含むと、
そのまま慎吾の唇に、そのカプセルを押し込んだ。
机の上のビールでそれをさらに流し込む。

コクリと動く、白い喉。
俺の飲ませたものを、疑いもせずに飲み込む慎吾に、
俺の中で愛しさが嵐のように吹き荒れる。
「…んッ…な…に…?」
「いいから。慎吾…じっとして…」
慎吾を抱き上げ、ベッドへと運ぶ。
そして袋の中から取り出したのは、ファーの付いた手枷。
このグレーと黒の縞の模様。

何て慎吾によく似合うんだ…!

「て…めッ…なに…すんだよ!!」
金具を止めるカチリという音に、流石に気が付いたのか、慎吾が叫ぶ。
「いいから。…慎吾」
「よく…ねぇッ!!離…せ!!」
ジタバタと往生際の悪い慎吾を抱き寄せ、唇を重ねる。
「―――んッ…ふ」
逃れようと暴れていた身体から、力が抜ける。
「はぁ…」
クスリが効いてきたのか、慎吾の息が少し乱れ始めた。
胸の突起をチロッと舐めると、身を竦めるようにして、息の上がるのを堪える。
その間にも、こんな時だけ妙に器用に動く俺の指先は、
次々と慎吾の着ていたものを脱がしていく。

「ヤダッたけしっ…」
羞恥に顔を染め、涙の滲んだ瞳で俺を睨みながら、
全裸にファー付きの手枷で横たわる慎吾。

はぁ…たまんねぇ…!!

それだけで俺の息子は限界領域だったが、
さらにまだメインは残っていた。

ネコ耳カチューシャに尻尾付きのバイブレーター。

ああ、これを付けた慎吾が見たい!!
悪ぃ慎吾!
俺は今から鬼に、いや畜生になる!
後で殴られてやるから!!



*****



「毅!起きろ!」
「………ん…うう?」
「おめぇ、バカか!?今何時だと思ってんだぁ―?」
ベッドから蹴り落とされ、二日酔いの頭にガンガンと響く慎吾の声。
いまいち状況がつかめない。
「う…何時だ?」
「12時だよ!12時!昼の…!」
「げ…!会社!」
カーテンから漏れる光の感じから言って、それは嘘じゃ無さそうだ。
俺は慌てて飛び起きた。
「ぶぁ〜か!今日は土曜だっつーの!」
俺より先に起きていることの方が珍しい慎吾が、ゲラゲラと笑っている。
「あ…そ、か」
だったらそんな起こし方しなくても…と言いたいところだが、
せっかく上機嫌の慎吾の気に障ることはご法度だ。

「て言うかよー。おめぇ何か夢見てたろ?」
慎吾が俺にコーヒーを差し出しながら、ニヤリと俺を見る。

夢?あれは夢?
くそー!だったら最後まで…。いやいや。そうじゃない。

「いや…別に」
とりあえずしらばっくれてみる。
「フン。そうかよ」
慎吾は鼻を鳴らし、キッチンへ消えていった。
気に入らない時の癖だ。
やばい……。俺、寝てる時に何したんだ?
いや。だからって正直に話せるわけもねぇし…。
とにかく落ち着こうと煙草に火を付け、フゥーと息を吐き出した。

そういえば……。
昨夜飲み会が有ったのも事実だし、あの賞品を貰ったのも…?
ふと見たベッドの脇の通勤バッグの横には、例の紙袋が開かれた様子も無く、
ちょこんと置かれていた。

これはもしかして……!?



END



中里の野望(?)の結末はいかに……!
次回『悲願達成』乞うご期待!(嘘です/笑)
つーかしばらく間空けてたら、頭の中がついに腐りました。
中里ファンの皆様マジでごめんなさい(汗)


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